2017年2月18日土曜日

花のことば(6)


 ある夕方の事、車の中のはなが話し始めた。空には欠けた月が白く浮かんでいた。
 
「1,2年生の時は先生に話せなかったけど、3年になって、連絡帳に書いてくださいと、 先生に言われて、丸ちゃんがいじめられたことを、一か月ぐらいたってから書いたら、先生に、できるだけ早く教えてくださいと言われたの。」はなは、3年間いじめをどうしたらいいのか、考えていたのだろう。
小学校はいじめの問題で、先生もぴりぴりしている。
 
「先週のこと、隣の席ののんびりした子が、いつも、上靴でたたかれたり、いじめられても笑っているので、その子に、先生に言ったほうがいいよ、と言うと、言えばもっとひどくなると答えるので、それなら一生されちゃうよと言ったの。その子は、それで、先生に言って、いじめた子は校長先生に呼ばれて帰ってきた。そしたら、お前のせいだぞと、私の顔めがけて拳固を出すので、顔をよけたら、拳固は右のほうに伸びてきた。逃げても俺のほうが早いからと言うので、小回りは私の方がとくいだよと言ったの」
 
へーそんなことがあったんだ。花ちゃん偉いねと言うと。
 
「でもその子は、私にプリント渡すとき、もみくちゃになったその紙を、これは俺の、はいと言ってあたらしい紙をくれたから、やさしいところもあるし、それに、その子は歌がとても上手と、クラス会の時先生に言ったよ。」
そうだね、悪いところだけ言うとその子も可愛そうだけど、良いところも言ってあげてよかったね。と感心する。
その子は、クラスで一番強くて、その次が、おじいちゃんの知っている何々君で、もう一人いて、3人は仲良しなんだよ。と、車が家に着いて、これで、この話は終わった。

     
2,3日たって、「おじいちゃん、いじめられた子が、いじめた子に文句を言うようになったの、そしたら、昨日、いじめた子が、持ってきちゃあいけない大きなチュウブの糊をみんなに見せびらかて、いじめられた子の道具袋に入れるのをわたし見てたの、クラス会
で、俺の糊誰かに盗られちゃったと言うので、入れるの見たよ、と言ったんだけど、」それからどうしたの?と聞くと、「おじいちゃん、この話はもうしたくない」と口をつぐんだ。
     
何かなければいいのだけれど。
はなちゃんは悪いことは許せないのだろう、けれど、事は簡単に終わらないことも知ることになったようだ。
     
 
毎日2冊ずつ本を学校の図書館から借りてきて読んでいるはなは、伝記とか、物語とか、何何の不思議とか、子供の料理教室とかを読んでいる。この日は、人生とはという子供向けの本を僕に見せて、[これ、私にいろいろ突きつけるの]と言った。中を見ると、幸福とは?とか、一番になることとは、生きるとは、死ぬとはとか大文字で書いている。
     
はなちゃんの幸福何と問うと、「バレエができること」と言うので、え、家族は?と聞き返すと「家族なかよく、バレエが踊れること」と答えた。今は、週6日バレエの練習をしているが、新しく始まった日曜日の先生が、すごく厳しい先生で、「やるつもりなら、もっとやりなさい!」はなは手足身体で感じたことを表現するのが楽しみで、先生は表現したいならもっとしなさいと、きつく指示するのだそうだ。「いろいろ教えてくれるので、教えてくれたことをノートに書いてるの、すごく嬉しい」と言う。
     
バレエの日は、おばあちゃんにバレエのお団子頭にしてもらい、その前にコスチュームに着替える。5時からレッスンが始まるので、4時に学校に迎えに行って、帰ってすぐにおやつを食べて、用意して階下に降りてきて、僕が伊勢崎教室まで5,6分自動車で連れていく。
昨日のこと、車の中で「おじいちゃん!早くして、もっと早くスピードを出して!」と怒鳴るので、まだまにあうよと言うと、「ダメなの、早く行きたいんだから、早くして!」と、怒っている。降りてくるのが遅いから仕様がないよと言うと「おばあちゃんが、4回もやり直すから遅くなったの!」とぷりぷりしている。そんな怒っているとバレエも怒ったバレエになるよと言うと、「コッペリアは、私を見てよと、少し、怒った風だからいいの」とのたまう。そのあと「私は、いつも、表情が変わるの」と急にまじめに言う。たぶん先生に言われたのだろう。
色々な表情が踊れるのはいいんじゃないのというと、だまっている。
「前の車と空きすぎ!もっとスピード出して!」とまだ怒っている。
もっと怒ったらいいコッペリアが踊れるんじゃないのと言うと「コッペリアと怒り方が違うの」と言う。それでも、車から降りる時には、機嫌よく「行ってきます」と笑って降りていった。

太田教室はママが行き、伊勢崎教室は、僕の役目だ。一日のうち、朝の集合場所へのんちゃんと一緒の見送りと、夕方の学校の迎えと、バレエへ連れていく時と、週二日一緒にお風呂の入るときだけが、はなとの会話ができる時間だ。徐々に少なくなっている。
 
     
 
 
 
 

0 件のコメント:

コメントを投稿