忘備録のつもりで、孫の記録を書いているが、今日は、僕のことに始終してしまった。
はなちゃん、もう少しお肉を食べたほうがいいよ、と、言うも、もういっぱいと言って、それ以上食べない。
食卓では、一番最後まで残って、ゆっくり食べている。
美味しい美味しくないは、本人はよくわかっているようで、好きなものの味については講釈ができる。
クラスでも一番やせていて、筋肉をつけるためにも、もう少し食べたらと思うのだけれど、自分で決めたこと、また、先生に太らないでね、と言われているようで、おじいちゃんやおばあちゃんは心配するばかりだ。
がりがりなのに、食事制限しているから足の指など、がいこつの足にように見える。
「おばあちゃん、美味しいね、こんなに美味しいの初めて」と、人に気を使うが、美味しくないものは、何も言わずに食べ残している。
先日「おじいちゃんの作るもの、美味しいんだけど、おばあちゃんが気にするから、言わないでいたの」と、カボチャのプリン、山で作って持ってきたときに言った。おじいちゃんは素直に喜んだけれど、これも、気を使って言ってくれたのだろう。
フミヤは、「僕が何か言っても、お姉ちゃんのことばかりで、僕の言う事なんか聞いてくれない」と、ママに言ったそうだ。
ママの二の腕をさすっては、じいちゃんの顔を見てにやけている。「ふみや!ママにいつまでひっついてんの!」と言っても、まだ、にやけている。男の子は、いつまでも、そんな気持ちが続くものだ。じいちゃんも同じだ。
おとついね、小泉さんが、いまだじょうずでないウグイスが鳴いていました、と教えてくれた。
僕は、すぐに,机の横にある良寛さんの歌集を取り出し、ウグイスの歌を教えてあげようと、ページ開いたら、開いたところにその歌があったんだ。
感が良いとき、そんな経験があるから、おどろかなかったけど、小泉さんは、すごいですねと感心していたよ。はなちゃんはそんなことあるかな?
「うぐいすの初音は今日とわがいへば君はきのふといふぞくやしき」
良寛さんにはこんなかわいい歌もあるんだよ。
おじいちゃんはまだウグイスの鳴き声聞いていないので、小泉さんが聴いたのが、良寛さんみたいに少しうらまやしかったんだ。
それでね、翌日の朝5時ごろ外のテラスに座って煙草しているとき、遠くでさよなく鹿の声が、ピー、ピーと聞こえていた。
静かな中、鹿の小さな声だけが、ひびいていたんだよ。
鹿は、この数日続けて泣いている。
誰かに助けてもらいたいと言うようなさみしい声だよ。お母さんを呼んでいる小鹿の声かもね。
うぐいすは、今年はまだ鳴き声の練習をしていない。
時々聞こえていたカラスの鳴き声もしない静かな森のひと時を、コーヒーと煙草をふかしながら、東の木々の間から見える朝焼けや、木々のたたずまいをいつものように楽しんでいたんだ。
そんな時、おじいちゃんは、ふと、良寛さんのその歌を思い出してみようと、
心の中で
「うぐいすの初音は今日とわがいへば君はきのうといふぞくやしき」
とつぶやいた。ちょうどそのあと一秒もおかずに
「ほーほけきょー」と可愛い声が右奥の森の中から聞こえてきたんだ。
おじいちゃんはびっくりして「えー聞こえていたの?」と、少し大きな声で口に出して聞いたんだ。
こころの中で言ったことだから、聞こえているわけないのに、つい声が出てしまった。
そのあと、うぐいすは、ピーピーとへたくそな声や、ほーほけきょと、上品な声が混ざり合って、何匹かが合唱してくれた。本当に、気持ちの良い朝だったよ。
はなちゃんは、木と話したことある、と言っていたけれど、おじいちゃんは、うぐいすと話すことができたんだよ。
うぐいすと話すことのできるおじいさんで、テレビに出ちゃおうかな?どう思う?
でも、つぎの日の朝、同じようにしても、もう鳴いてくれなかった。これじゃあ、テレビに出れないね。
今日の新聞に、「ホラは他人をよろこばせるためにつくもの、ウソは自分のためにつくもの」と書いていたよ。
「ウソはだめだけれど、ホラならいっぱい吹きなさい。
怪談ばなしや、いたずら話をしかけて楽しむ。
ホラは「不思議を待つ力」を養う。
ホラは世界を美味しいパンのようにふくらませるパウダーだ。
この童心をまもるためにこそ人はおとなになるのかも」と書いている。
ホラは、大きな音のするほら貝と言う貝の音から来ている。
おじいちゃんは、ダジャレやホラばっかり吹いているけど、うぐいすの話は、ホラじゃあないよ。
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